ダイヤルゲージのダレによる誤差 | TTS

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ダイヤルゲージのダレによる誤差

芯出し作業で求められる正確さ

芯出し作業を実施するにあたって、現在の芯出し状態がどうなっているかを正確に測定することが必要です。現状が正確に把握できていなければ、修正が必要か否か、必要ならどれだけ修正しなければならないかがわかりません。

ここでいう「正確に」という言葉は、

  • 1/100mm単位で誤差のない測定
  • 測定結果の再現性があること

の2つを意味しています。

ダイヤルゲージのダレによる誤差

回転機の軸の芯出し作業には、ダイヤルゲージという計測器が多く使用されます。このダイヤルゲージを使った測定で、忘れてはならないのが「ダレ」によって生じる誤差の問題です。

ダレは漢字で書くと「垂れ」であり、「撓み(たわみ)」とも呼ばれています。ダレとは、一点が支持された長い棒である片持ち梁(はり)に、重さのある物体を取り付けたときに梁が撓む現象のことです。この撓み量は、梁の材質と長さ、重さ、そして取り付けられる物体の重さで決まります。

ダイヤルゲージによる芯出し測定に置き換えると、

  • 梁・・・・測定バーの材質、長さ、重さ
  • 物体・・・ダイヤルゲージの重さ

になります。このダレは、重さのない測定バーとダイヤルゲージを使用しない限り必ず発生するものであり、ダイヤルゲージを使用する以上は絶対に避けられない現象です。

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ダレによる誤差を実際に測定してみると

図1ではダイヤルゲージを使って芯出しの測定をしています。左のカップリングにマグネットベースを設置し、測定バーを延ばしてもう一方のカップリングにダイヤルゲージを当てて周を測定しています。その測定値が図2です。

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次に、周を測定するダイヤルゲージを小さな軽いものに変更したのが図3であり、その結果が図4です。

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更に、中間軸を左側のカップリングにセットし測定したのが図5で、結果が図6です。

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このように、同じポンプの芯出しの測定値が、ダイヤルゲージの大きさ(重さ)を変える(図3、4)、測定バーの長さを短くする(図5,6)ことで変化し、下の測定値は図4で-5/100mm、図6で-17/100mm に変化しています。これがダイヤルゲージのダレによる測定値の誤差です。

最も誤差が小さかった図5、6でもダレによる誤差はゼロではないため、この腕の長さのときのゲージのダレと中間軸自体の撓みがいくらであるかを確認し、測定結果を補正する必要があります。

ダレによる誤差を解消する

測定結果の補正のために、まずはダレ量がどの程度になるかを調べます。ダレの量は、測定バーの角度や材質、長さ、重さ、ダイヤルゲージの重さなどの条件で変化します。同じ機材を使用しても取り付け姿勢が違えばダレの量は違ってきます。そのため、ダレの量はダイヤルゲージを設置して計測を行う都度確認し、毎回その分を芯出し測定値から引かなければなりません。

80Aのガス配管にダイヤルゲージをセットし、180度回転させたときに表示されている値を記録していきます(図7)。ダレ量は150mmの測定バーの長さで7/100mmになっています。

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ダレ量を確認した後、この値からダイヤルゲージの測定値を補正していきます。

測定した結果が図8の結果であったとします。この測定結果が妥当なものかどうかを確認します。ダイヤルゲージの測定結果は「上下の測定値の和」=「左右の測定値の和」でなければなりません。この測定結果では「上下の測定値の和」は、0+(-23)=-23。同様に「左右の測定値の和」は、-8+(-16)=-24。1の差がありますが、ほぼ等しく妥当な測定値だと判断できます。

次に、図7の方法で、実際に測定するときの測定バーの長さのダレ量を確認します(図9)。左右が同じ値ではないことから、ダレにより上下だけでなく左右の誤差も生じていることが分かります。

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図8のダイヤルゲージの測定値から図9の測定されたダレ量を引き(図10)、真の測定値(図11)を求めます。この図11の値がダレ量を除いた本当の芯ずれの値です。このようにして、ダイヤルゲージでは避けることのできないダレによる誤差を修正します。

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ダレの問題を解消した芯出しツール

以上のように、ダレの誤差を解消する手間は小さくありません。しばしば、

「この測定ではダレが発生しないように、測定バーの長さを短くしています」
「7/100mmぐらいのダレがあるはずなので、これを考慮して芯出し、シム調整をしています」

という内容の発言を耳にします。しかし、一見ダレを考慮した慎重な姿勢のように思えても、このような配慮が必要なこと自体、測定以前の段階からダイヤルゲージには「正確な芯出し」に対する懸念があることを表しています。

ダイヤルゲージに替わり、ダレの問題を解消する新たな芯出し器として登場してきたのがレーザーによる芯出し器です。レーザーによる芯出しは、光の直進性によりダレの問題が無く、正確な測定が誰でも素早く実行できます。

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