ロール設備全体の平行度調整 | TTS

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ロール設備全体の平行度調整

ロール設備の製品不良率が悪化?

フィルム・不織布・金属箔・薄板などのシート状製品や、化学繊維・金属線など糸状製品を連続して生産する設備の多くにロール設備が使用されています。

ロールとは回転体を使用する設備で、伸ばす、拡げる、厚みを変える、熱や圧力を加える、型押しする、プリントする、テンションを掛ける、方向を変える・・・など、様々な役割を果たします。

このロール設備で、近年「シワ」「絞り」「破れ」「ムラ」などの製品不良が発生しやすくなっていることをご存知ですか?

ロール設備の大型化・高速化・精密化が進んだ結果、設備据え付けや調整に高い精度が求められるようになってきました。また、製品自体の高機能化で製造工程は繊細なものとなり、ロール設備のわずかな据え付けミスも品質に重大な影響を与えてしまいます。

例えばロールの平行度が悪いと、製品が蛇行することがあります。製品の蛇行は、シワや絞り・破れの発生、厚みのムラの発生など品質不良の原因となります。また、製品が正しく流れないと、ロールなどの機器に想定外の力が加わって消耗が進んだり、振動が激しくなるなどして設備の寿命短縮にも繋がります。

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ロール設備の平行度調整のメリット

こういった経験から、多くの工場では品質不良を最小限に抑えようと、多大な労力と時間をかけてロール設備のメンテナンスを行っています。

もちろん、ロールの平行度を完全にするだけで、これらの問題が全て解決できるとは限りません。しかし、平行度をチェックし修正した結果、品質が大きく改善された事例や、ロールの傷みが減り、メンテナンス周期を大幅に延長できてコストダウンが図れた事例も数多く見られます。

更に、ロールの精度が向上することでラインの走行速度をアップさせることができれば、生産性向上も期待できます。このようにロール設備の平行度調整は、以下の項目などに有効です。

  • 製品品質の向上(歩留まりの向上)
  • 生産性の向上
  • メンテナンスコストのダウン

ロール平行度を設備全体で見る

従来の計測技術では、設備全体としてロールそれぞれの関係を精密に把握することは大変困難でした。

生産中に蛇行や品質問題が発生すると、通常その現象が発生した周辺数本のロール平行度を測定し、調整することで対処します。調整といっても、平行度の測定結果を基に修正するのではなく、生産物の流れを見ながら現場合わせがされることもしばしばです。

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このような方法で長年使用されてきた設備では、設備全体のロール平行度はバラバラなはずですが、各ロール間で平行度の絶妙なバランスが取れていることで品質が維持され、生産が保たれている場合があります。

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しかし、一度問題が発生すると原因箇所の特定も難しく、経験と勘を頼りに更なる現場合わせの調整を試みても、上手くいかず泥沼にはまりこんでしまうという話をお聞きします。

ロール平行度を効率良く調整するには

このような泥沼を避け、的確に効率良く調整するには以下が効果的です。

  • 問題箇所だけでなく、設備全体の据え付け状況を精度良く測定し、その結果に基づいて全体のロール平行度を調整し正常な状態にする
  • 現状問題が無くても、運転が上手くいっている状況を設備全体としてあらかじめ定量的に把握しておく

一見手間がかかるように見えても「急がば回れ」の言葉通り、問題が発生した際には問題箇所が素早く特定でき、トータルでのメンテナンスコストダウンにも繋がります。

スペースシャトルの技術を応用

TTSが提供するパララインによるロール平行度計測では、スペースシャトルなど宇宙・航空工学で利用されている、リングレーザージャイロ(方位測定器)を使用します。

リングレーザージャイロとは、サニャック効果を利用したもので、光路中を進む光の速度が光路の運動に関係なく一定であることから、光路(この場合ジャイロ)の動きによって光路の長さが変わったかのように見え、干渉が生じる現象を利用しています。

宇宙空間での位置を把握するためスペースシャトルに搭載されたこのリングレーザージャイロを、パララインは3次元軸に1つずつ搭載しています。これにより、ロールの置かれている環境や位置に関わらず、全てのロールの平行度を基準ロールに対し、同じ精度(±5/100mm)で計測することができ、しかも、この高精度計測を非常に短時間で実施できることが魅力です。

 

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