外観目視検査の問題点
外観目視検査では腐食のヒット率が低い
外面腐食が発生しやすい箇所は経験からリストアップすることができますが、プラントを健全に維持していくためには、これらの「外面腐食が発生した場所」を検査するだけでは十分ではありません。なぜなら、「保温材下腐食(CUI)など外面腐食が発生しやすい場所は?」で説明したように外面腐食の発生には水が供給されることが必要だからです。つまり、水の侵入経路を特定し、それを封じることで初めて本当の意味での対策となります。
このとき考えなければならない重要なポイントは「水の侵入経路と水が滞留する箇所は必ずしも一致しない」ということです。
「外面腐食が発生しやすい箇所」で紹介した部位は、外部からの水の侵入経路上にあり、水が存在する環境であることは事実ですが、その箇所が最終的に水の溜まり場になっているとは限りません。このことを踏まえて検査を実施しないと、「外観上問題があった保温板金の破損箇所を解体し、配管を検査したところ、配管自体には問題がないことを確認して復旧した。しかし、その直後、検査実施箇所から1m離れた保温板金表面は外観上問題がない箇所で漏洩が発生した。」 というような「見逃し」「検査モレ」が起こります。
「耐火材や板金がボロボロなのに、解体してみると配管には腐食が見つからない」ということがしばしばあります。「外観目視検査では腐食のヒット率が低く、思いのほか費用対効果が悪い。」という声も聞かれます。
さらに、管理のしくみの問題として過去の補修履歴が担当者間で引き継がれずトラブルにつながる例もあります。「保温板金が外観上問題がない箇所でトラブルが発生した。補修のために保温材を解体したところ、古い板金の上に新しい板金が巻かれていた。」といった話も実際にあるようです。
外観目視検査が難しい箇所
保温材などが巻かれていない裸配管でも、外観目視検査は異常箇所を直接見て確認できるため、有効な手法として広く採用されています。しかし、当然のことながら目視検査では目に見えない部位の異常を発見することはできません。そう考えると「外面腐食が発生しやすい箇所」で述べた通り、腐食が発生しやすい場所は目に見えない箇所が多いわけですから、外観目視検査のみでは、プラントの信頼性を上げるのには自ずと限界があると言えます。
狭所 | 高所 | 保温・冷・耐火材で覆われている |
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検査員が⼊るスペースがなく、⽬視で確認できない。 | ⽬視で確認できない⾼い場所に対象があり、⾜場などの付帯⼯事が必要となる。 | 保温材や保冷材が巻かれており、⽬視で確認すべき対象の状態を直接⽬で確認できない。 |
ピット | 半埋設部 | 埋設部 |
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検査員が⼊槽できるスペースがない場合、対象までアクセスできない。もしくは、アクセスできる場所が限られる。 | 配管上部の状況は確認できるが、下部については掘削しなければ確認ができない。 | 配管の周辺を掘り起こして、かつ、配管に巻かれた防⾷テープを解体しなければ、配管の状況を確認できない。 |
草が茂っているところ | ステージ下 | |
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草が繁茂しており、配管を⽬視で確認できない。 | 防油堤などの貫通部内で腐⾷しており、⽬視するためには防油堤の解体が必要となる。 | 配管の上⾯は確認できるが、下⾯は配管が密集しており⽬視できない。 |
想定外のトラブル
また、プラントの老朽化が進む中で、「今まで想定していなかった箇所からトラブルが発生した」「検査対象には入っていたものの、検査の順番がくる前に漏洩が発生した。検査が追い付いていないし、計画も立てられない。」 という声もお聞きするようになりました。
想定外の場所から発生
外装板金が痛んでいないところ | Cチャンネルの抱きサポート | 防食テープの下 |
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板⾦不良箇所から水が侵⼊し、想定外の箇所で⽔が溜まり腐⾷が発⽣する。 | サポートの隙間が汚れなどで埋まり滞⽔箇所となり、接触している配管まで腐⾷させる。 | ⻑年の使⽤により防⾷効果が弱くなり、テープが剥がれた箇所から⽔が滞⽔して腐⾷させる。 |
海上の配管に使⽤される防⾷⽤被覆 | 架台接触部の防⾷⽤被覆 | 保温用の被覆 |
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過酷な環境下で使⽤されているため、経年劣化や施⼯不良などにより、少しの隙間でもあれば腐⾷が発⽣する。 | 経年劣化により被覆が剥がれ、剥がれた隙間に⾬⽔などが侵⼊して、腐⾷が発⽣する。 | 配管に荷重がかかったり、経年劣化などにより被覆が剥離し⾬⽔等が侵⼊して、腐⾷が発⽣する。 |
保温内の蒸気漏れ | ||
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トレースが保温配管内部で破損して蒸気が保温内で漏れ出し、該当配管、もしくは周辺にある配管も腐⾷する。 |
想定外のタイミングで発生
検査計画の立案中にトラブルが発生 | 過去に検査したエリアから漏えいが発生 |
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すでに老化は進んでおり、どこからトラブルが発生してもおかしくない状況である。 | 過去に検査が実施されて、当時は問題が認められなかった箇所についても老朽化は進行する。 |
これらを言い換えると、既に老朽化が進んだプラントは待ったなしの状況になっており、いかにスピーディーに検査の網羅性を上げるかが、外面腐食に打ち勝つために重要なポイントとなっていると言えます。しかしながら、目視検査のみで検査の網羅性を上げるためには、相当な時間とコストが必要になってきます。これらは経営側の視点とは相反することも多く、外面腐食を管理下に置くことが、さらに難しくなっているようです。
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