火力発電所における熱画像診断では特定困難なボイラー給水の漏洩 | TTS

診断事例

バルブの内漏れを網羅的に検査して省エネと生産リスクの低減に貢献

火力発電所における熱画像診断では特定困難なボイラー給水の漏洩

課題特定困難なボイラー給水バルブからの漏洩

熱画像診断が示す「漏洩」と現場の知見の乖離

ある火力発電所では、ボイラー給水の継続的な減少に悩まされていました。その原因として、バルブからの漏洩が強く疑われましたが、発電所特有の高騒音環境が、従来の聴覚による漏洩検査を困難にしていました。そこで導入されたのが熱画像診断(サーモグラフィー)でしたが、多くのバルブで二次側が高温を示す赤や黄色の画像として捉えられ、漏洩を示唆する結果が出たのです。しかし、実際の給水減少量から考えると、これほど多くのバルブが同時に大量に漏洩しているとは考えにくく、熱画像診断が必ずしも実際の漏洩箇所を正確に捉えているわけではない可能性が浮上しました。さらに問題となったのは、蒸気主管の上にある安全弁も同様に漏れを示すような熱画像で捉えられたことです。これに対し、現場担当者は定期修理で間違いなく実施していることと、過去の安全弁の温度上昇の原因が伝熱であったことから、「この安全弁は漏れていない」と強く主張しており、ここでも熱画像診断の結果と現場の知見との間に乖離が生じました。発電所として、疑わしいバルブや安全弁すべてを網羅的に交換することは、膨大なコストと工数を要し、現実的ではありません。本当に漏洩している箇所を効率的に特定する新たな方法を見つけ出し、効果的な対策を迅速に実行することが喫緊の課題でした。

ボイラー給水配管の熱画像診断では多くのバルブで二次側が高温を示し、漏洩の可能性が示唆されました。

対策超音波と温度を組み合わせた「フレアロスサーベイ」の導入

火力発電所の騒音下でも有効なTTSからの新提案

この困難な状況を打開するため、以前から各種診断で協力を得ていたTTSに相談を行いました。その結果、TTSから提案されたのが、超音波と温度を同時に検出し、専用ロジックを用いて総合的に漏洩を判定する「フレアロスサーベイ」でした。この手法は、周囲の環境に影響されない特性を持つため、高騒音の火力発電所でも有効に活用できると期待されました。

効果真の漏洩箇所を特定し、効率的な保全へ

熱画像診断の「漏れ」の原因解明と現場の知見の証明

フレアロスサーベイを導入した結果、熱画像診断で漏洩を示唆していたバルブのうち、実際に漏れていると診断されたのはその内の数か所でした。例えば、熱画像診断では(A)と(C)のバルブと同様に二次側が高温を示していた(B)のバルブは、フレアロスサーベイでは正常であることが判明しました。(B)が漏れていないにも関わらず熱画像診断で漏れを示唆した原因は、その後の調査で、(A)から漏れた高温のボイラー給水が配管の中で(B)の二次側まで回り込んでいたためと判明しました。また、熱画像診断で漏れを示唆していた安全弁も、フレアロスサーベイで診断すると正常であることが分かり、現場担当者の知見が裏付けられました。安全弁が熱画像診断で漏れを示唆した原因は、蒸気主管と安全弁の距離が近すぎたため、蒸気主管の熱が配管を伝わって安全弁の温度を上げてしまっていたためと確認されました。

フレアロスサーベイを導入した結果、熱画像診断で漏洩を示唆していたバルブや安全弁のうち、実際に漏れていると診断されたのはその内の数か所でした

このように、フレアロスサーベイの導入により、従来の聴覚やサーモ画像診断では特定が難しかった真の漏洩箇所を効率的に見極めることができました。これにより、不要なバルブや安全弁の交換を避け、大幅なコストと時間の削減を実現しています。

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