近年、埋設配管や環境の悪い場所の配管に、ポリエチレン被覆鋼管が使用されることが多くなっています。ポリエチレン被覆配管は、防食性能が優れている一方、検査の際に被覆によって管の金属部分に直接アクセスできないため、従来の方法では被覆をはがす必要があり、配管の全面検査が難しい対象でもあります。
被覆を全てはがす全面検査は手間・工数・コストの面で困難であるのに加え、被覆の一部をはがす場合も、剥離の際に配管を傷つけてしまったり、ライニングの復旧に失敗して被覆に隙間やピンホールなどが発生してしまう可能性があり、かえって腐食のリスクを高める恐れがありました。
海外にあるガス田でも、外面に3層ラミネートのポリエチレン被覆(ライニング)が施工されている24インチの埋設配管で、被覆(ライニング)をはがさない腐食検査の方法を検討していました。
配管の広域診断にはガイド波を用いたスクリーニング検査が非常に有効です。このガイド波検査でも、ポリエチレン被覆(ライニング)配管が対象の場合は被覆が検査の妨げとなるため、従来はセンサー取り付け箇所の被覆(ライニング)の剥離をする必要がありました。
しかし、その後新たに、システムの出力が上がって減衰の少なくなった新開発のガイド波センサーが登場。問題のポリエチレン被覆(ライニング)配管でも、この新ガイド波センサーを用いて被覆をはがさずに検査をしてみることとしました。
検査の対象となるのは、配管内を通して検査するピグが使用できないエリアです。対象の配管には、外面に3層ラミネートのポリエチレン被覆が施工されているため、ガイド波による検査を実施する場合も、通常はセンサー設置箇所の被覆を剥離して行います。しかし今回は、お客様が剥離作業を希望されなかったため、センサー設置箇所周辺地面の掘削のみで、被覆は剥がさずその上から検査をしました。
お客様の当初の希望は、ピグが使用できない範囲の30%程度のエリアをガイド波でカバーできればよいというものでした。
しかし、実際にガイド波検査を実施した結果、1回の検査でカバーできる範囲が広く、場所によっては一箇所から75m間もの検査が実施できた箇所もあったため、ピグが使用できない範囲の90%をカバーすることができました。当初の計画よりも検査できた範囲が大幅に広がり、お客様も結果に大変満足されました。
また、この結果を受けて、国内でもテスト用に用意した6インチの2層ポリエチレン被覆配管(6m)を使って、次の手順で被覆の上からガイド波検査を実施しました。
(1)最初に健全な状態でデータを取得
(2)被覆層にのみ人工欠陥を作りデータを取得
(3)別の箇所に被覆層+鋼管まで到達する人工欠陥を作りデータを取得
その結果、(2)の被覆層のみの欠陥は検出せず、(3)の鋼管の欠陥についてはクリアに検出できました。このテストにより、ポリエチレン被覆配管の場合、被覆の欠陥は検出できませんが、鋼管本体に何らかの腐食や減肉が発生すると、被覆の上に設置したセンサーから検出が可能であることがわかりました。