メンテナンスを学ぶ

やってはいけない芯出し(カップリングアライメント)

芯出しは「急がば回れ」

芯出し(カップリングアライメント)は、ポンプやファンの据付・整備の最後に実施され、「これが終わればカップリングを繋ぎ、機械を動かせる」という仕上げの作業です。設備の運転開始時間が決まっていて、心理的、時間的に余裕の無いことも往々にしてありますが、無理に短時間で終わらせようと、基本作業ステップを省略すると、余計に時間がかかります。

芯出しに大事なのは、必要な作業ステップを確実に行うこと。「急がば回れ」の諺にあるように、確実に作業ステップを踏んでいけば、作業項目は多く見えても、全体時間は短くできます。

また、芯出しは「経験と勘」とよく言われますが、基本作業ステップを踏んでいけば、誰でも必ずできるものです。この芯出しを難しくし、時間がかかったり、新品のポンプやブロワーなのにすぐベアリングが壊れるのは、「やってはいけないこと」をやってしまったときに起こります。

では、芯出しの「やってはいけないこと」とは何でしょうか?今回、ベテラン実務者の方々に、代表的な悪い芯出しの例と、良い芯出しに向けてのアドバイスをお聞きしました。順番に見てみましょう。

悪い芯出しの例 - 1

購入した新品のポンプにそのまま配管して、芯出しをせずに使用する

メーカーで芯出し済みなのでやらない、と言う方がいますが、入口、出口配管が接続されると、配管応力によってポンプのケーシングは歪み、芯出し状態は変わります。また、ポンプベースのレベル出しでも同じことが言えます。

配管とポンプのフランジの隙間が均等になっていない

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ベッドのレベルが水平になっていない

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横に動かそうとしてボルトがモーターの脚に当たり動かせない。モーターを下げようとしてもシムがない。これらの不具合の原因は配管やベースにあり、最初の据付け時に直しておかなかったために起こります。

良い芯出しへのアドバイス

  • 配管を繋ぐ前に芯出しを確認しましょう
  • 配管とポンプのフランジの隙間を均等にしましょう
  • ベッドのレベルが水平になるよう基礎を打ちましょう
  • 配管を繋いでから芯出しを確認し、必要なら修正しましょう

悪い芯出しの例 - 2

モーターなど修正する機械の足元を掃除せずに芯出しを始める

わずかな錆止めの塗料、錆が正確なシム調整を妨げます。

良い芯出しへのアドバイス

  • シムを入れる場所をきれいに掃除しましょう

悪い芯出しの例 - 3

脚のガタを確認しないで芯出しをする

機械脚とベース間に隙間があると、ボルトを締め付けたとき下に引っ張られてケーシングが歪み、芯出しが変化します。この現象はソフトフット、猫脚、天秤になっている、ガタがある、と言われ作業者泣かせです。

ソフトフット、猫脚などと呼ばれている状態

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「ボルトの緩め、締めつけ順番を常に同じにせよ」と教えられますが、これは常に同じ方向に歪ませるためです。そして歪む方向とは逆に芯をずらしておけば、締め付けるといい数値になります。

しかしこれにも問題はあります。まずこのやり方はトライアンドエラーで、良い数値になるまで何度も繰り返すため、終了時間が予想できません。そして最大の問題は、ケーシングが歪んでいることです。このことでケーシングが壊れたり、ベアリングの発熱、故障が起こることがあります。

良い芯出しへのアドバイス

  • 機械脚とベース間のガタをなくしましょう

悪い芯出しの例 - 4

使われていたシムをそのまま使う
修正する前の罫書き線を目印にして元に戻す

芯出しの時間が無いと、使われていたシムをそのまま元に戻し、脚の位置をベースにつけた罫書き線に合わせて芯出し終了・・・こんな芯出しが行われることがあると聞きます。

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その機械の必要芯出し精度がいくらか思い出してください。真ちゅう製のシムは一度使用すると厚さが変わります。また罫書き線に目測で合わせて芯が出せるなら、苦労はありません。仮にこんなやり方で芯出しを終えたとしても、その機械がまたいつ故障するか分からない、という不安が残ります。

良い芯出しへのアドバイス

  • シムは再使用せずに新品を使用しましょう
  • 手間を惜しまず、毎回正確な芯出しをしましょう

悪い芯出しの例 - 5

シムの枚数を多くしてしまう

芯出しが目標に近づくと、あと少し、あと少しと薄いシムを何枚も入れることがよくあります。これは、例えれば座布団をそこに敷いているようなものです。柔らかい座布団の上に載った機械のボルトを締め付けることをイメージしてください。枚数が増えるほど誤差も大きくなります。

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良い芯出しへのアドバイス

  • 1箇所のシム枚数は3~4枚に抑えましょう
  • 数枚の薄いシムは厚いシム1枚に交換しましょう

悪い芯出しの例 - 6

ボルトの締め付けを複数の人が行う

脚のガタがなく、入っているシムの枚数が少なければ、固定ボルトを締め付ける時のトルク差で芯出しが変わってしまうことは少ないとはいえ、モーターの左右のボルトを別々の人で締め付けると片締めが発生しやすくなります。特に最近の小型モーターはケーシングの剛性が高くないので、1人で締め付けるようにしてください。

良い芯出しへのアドバイス

  • ボルトは1人で締め付けましょう

以上が代表的な、悪い芯出しの例です。お話をお聞きした、あるベテラン実務者の方は言われました。

「芯出しが上手く行かないのは、手順を踏まないからだ。測定し、測定結果と機械の寸法から計算された修正量を施して、その通りにならなかった時は、測り方が適切でないか、ここにある悪い例のどれかに当てはまっているはず。」

皆様の参考にしていただければ幸いです。

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