
本事例では、株式会社テイエルブイ(以下 TLV)が販売またはレンタルする「iPECシステム」を使用し、 TTSがお客様のデータ管理を支援した内容です。
腐食率の常時モニタリングを実施するためにはTLVからiPECシステムを購入またはレンタルする必要があります。
iPECシステムの購入・レンタルについてはTLVのwebサイト「オンラインPEC腐食モニタリングシステム」のページをご確認ください。
同じ構造・同じ運転条件でA~Dの4系統ある水素添加装置の配管において、定期実施しているUT検査でA系統にのみ急速な減肉を覚知しました。本来はそのような急速な減肉が起こることは想定していない配管系であり、原因究明のために情報収集するのと同時に、発生していないB~C系統で同様の減肉が発生していなかどうかの調査、またA系統と違いがないかどうかを比較するためのデータを収集する必要が生じました。当然ながらトレンドを捕らえる必要があり、常時監視によるデータの連続性が求められました。

UT(超音波)検査は、正確な肉厚を迅速に把握できる非常に有用な手法です。
かつてハンディ型UTによる検査を試行しましたが、現場計測に伴う多大な工数がネックとなり、測定間隔が長期化。結果として腐食の進行をトレンドとして捉えきれず、運用の継続を断念した経緯があります。
その後、常設型UTによるモニタリングも検討したものの、設置に溶接を要するため、異常がない場合の移設が容易ではないという課題が浮上しました。
こうした経験から現在は、UTの弱点を補う設置が簡単で、かつ自動的にデータを収集できるモニタリングシステムを検討していました。<br />
このタイミングで(株)テイエルブイからオンラインPEC腐食モニタリングシステムを紹介され、導入の検討を開始しました。

まず、iPECがモニタリング技術としてUT検査を補完する機能と性能を有しているかどうか、もう一つは4系統のうち、異常な減肉が確認された系統と他の系統に何らかの有意差があるのかどうか、の確認です。
このような状況のなかで、定期UT検査で減肉が確認されたA系統の「正常な箇所」に4台設置、並行してこれまで減肉が確認されていないB系統に4台設置。合計8台で一年間の評価テストを開始しました。
一年間実施した評価テストの結果は、A系統・B系統ともに「減肉を検出せず」でした。これはテスト失敗ではなく、既知のメカニズムでは減肉しないはずの箇所が“予想通り減肉していなかった”ことが判明した、という成果になります。確認・検証のため実施したUT検査でも減肉していないという結果となったため、使えるモニタリング技術として使用を継続することになりました。

またテスト期間中にA系統、B系統のいずれもiPECのプローブを取り外し、UTで計測をしたところ、減肉のないことが確認できました。

継続の方針としては異常検出歴があるA系統の4箇所はそのまま経過観察、異常検出歴がないB系統の4箇所は場所を変えてデータを採取することとしました。
iPECの移設を実施する際に、iPECのデータを板厚換算するための基礎データ収集のため事前にUT検査を実施したところ、これまで減肉が観測されていなかったB系統で予想外に深刻な減肉が進行している個所が判明しました。

想定外の場所で減肉が発見されたという状況において、この減肉箇所に対して直ちに処置が必要なのかどうかはUT検査によるスポット的な測定結果では判断することができず、やはりトレンドデータが必要でした。
もし、トレンドデータに基づいて限界に達するまでの期間が予測でき、さらに数週間後に予定されている定期修理でこの問題箇所を修正して対処することができれば、将来の突発停止リスクを大幅に低減できることになります。
そこで急遽、定期修理開始までの残された時間の中で迅速に腐食速度から、今回の定期修理のタイミングで実施するかどうか判断することになりました。
過去に減肉が確認されているA系統に4台残し、4台を今回新たに減肉が確認されたB系統の別の場所に移設してデータ収集をおこなうことにしました。

iPECは腐食の進行状況を安定的に把握するために2ヶ月程度の監視期間を設けるのが一般的ですが、このときは目前に迫る定期修理で処置を実施するか否かを判断するため、数週間の短期決戦でデータ収集を試みることになりました。
その結果、当該設置個所ではわずか3週間程度の実施期間で最大で年間4mm/年という極めて速い腐食速度を捉えることに成功しました。このペースで腐食が進行すれば1年ほどで穴が開いてしまうという予測立つほどの値です。これほどの短期間で腐食が進行する実態を観測できたことはいまだかつてなく、トレンドデータを取得する効果が示された形になりました。
この腐食速度から判断し、定期修理期間中に当該箇所の配管材料を耐食性の高いステンレス鋼への変更工事を実施するという決断を下すことができました。

本件ではUT検査によって減肉箇所を特定することに加えてiPECによって得られたトレンドデータから予測される腐食速度を評価することで、もともとの計画には含まれていなかった配管の設計・工事を定期修理期間内に実施するかどうかという重大な決定を極めて短期間のうちに下すことができ、工事も滞りなく完了できました。
ひとたび発生すると突発停止の原因になりかねない漏洩事故に対する備えを、定期修理という生産にダメージがない期間内に処置を完遂することができたこと、それによりリスクを未然に低下できたことは非常に大きな成果でした。
同時にこの事例を通して、UT検査とiPECによるモニタリングを組み合わせて使うことで相互補完が可能になり、非常に効果的であることが確認できました。
他のモニタリング技術でも常時監視により連続性のあるデータを得ることができますが、自動的にデータが記録されるだけでは活用にまでは至らないことを過去に経験していました。iPECではTTSのサポートが入ることで、設置後の放置(形骸化)を防ぎ、異常傾向の確認・報告が確実に実施されるようになったことが従来との違いです。
iPECの特徴は 肉厚を実測していないスクリーニングであるiPECのデータとUT検査による実測値の相関パラメータを定義して、閾値を設定してアラートを発報したり、腐食速度を推定してリスク評価・考察がTTSの分析チームから提供されることです。TTSが20年以上PEC診断を実施してきた経験と振動測定に代表されるオンラインモニタリングを提供してきた経験。これらの経験がハード・ソフト両面のノウハウとして実務レベルに落とし込まれていることが他のモニタリング技術との大きな違いです。
今後も常時監視ツールの一つとしてiPECによるモニタリングは継続し、課題となっている水素添加装置配管における硫化水素腐食のメカニズム解明に引き続いて取り組んでいくことはもちろんのこと、リスクを低減して安定操業実現するためにもデータを収集していくことが決定しています。



