保温材下腐食(CUI)など外面腐食が発生しやすい場所は? | TTS

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保温材下腐食(CUI)など外面腐食が発生しやすい場所は?

外面腐食の管理がなぜ難しいのか

設備の外面からの劣化・損傷のうち、金属材料の化学的なプロセスによるものを外面腐食と呼びます。外面腐食の発生は、配管の表面温度、使用材料、運転条件、施工方法、プラントの建設場所など様々な要因が関係します。そのため、発生する場所は広範囲に及びます。

炭素鋼系の材質に話を限定すると、外面腐食には保温や耐火材下などの外観から見えない箇所で発生する「保温材下腐食:Corrosion Under Insulation(CUI))」「耐火材下腐食:Corrosion Under Fireproofing(CUF)」などがあります。また、このように表面が覆われていない対象についても、我々が普段目にしている錆に代表されるように、条件さえそろえば外面腐食はどこでも発生します。

外面腐食によるトラブルが起こる箇所は、多くの場合は目視で簡単には点検できない場所です。具体例としては、保温材や耐火材の下、構造物の隙間など、水の溜まりやすい部位です。これらは簡単に点検できないだけでなく、検査や補修に多大な費用が必要になります。機器・配管の多くは高所に設置されているため、足場の設置といった付帯工事費用かかることも多いためです。そのため保温・保冷材の解体などの前処理や付帯工事が不要な「検査効率を上げるスクリーニング」が注目をされてきています。

プラントを長期間運転すれば必ず老朽化は進み、外面腐食も進行します。そしてトラブルが顕在化するリスクは高くなります。しかし、上述の通り、トラブル原因となる外面腐食の対象は目視確認が難しく、検査や補修が簡単にできないことが多い場所であり非常に広範囲に存在しています。これが外面腐食の管理を難しくしている大きな原因です。その状況にあって、いかにコストを抑えつつ信頼性を高めるための検査ができるかが、経営面からも重要であり、設備検査・保全担当者の悩みとなっています。

外面腐食の発生要因

外面腐食が発生する主な原因は、機器や配管の外表面に長期間にわたり水が付着し、存在することです。その状態が成立するためには、継続して水が侵入すること、侵入した水がその場で保持されることが必要となります。

水が供給される要因は主に以下の4つです。

  • 降雨や冷却水の飛沫など外部から侵入する水
  • 温度差による結露
  • 保温材と鋼表面間の微細な隙間での毛管凝縮による水分の結露
  • 海塩粒子および保温材などからの溶出不純物イオンの化学凝縮(潮解)による水分の結露

また、保温材下腐食(CUI) ・耐火材下腐食(CUF)が進行する際の特徴として、以下の3点があります。

  • 水の供給源が非常に多様であり、水の侵入箇所と保温材下腐食(CUI) ・耐火材下腐食(CUF)の発生場所は必ずしも一致しないので、場所の推定が難しい
  • 露出している外面腐食よりも湿潤時間が長く継続するため、腐食速度が速い
  • 全面腐食ではなく、腐食箇所が局所化しやすい

外面腐食が発生しやすい箇所

突発的な漏洩事故などの防止を目的として、プラント全体で外面腐食を早期に発見しようとすると、稼働中に目視点検を実施することが基本になります。外観目視検査により抽出された箇所(保温・保冷・塗装不良箇所、腐食発生箇所など)は、箇所ごとに詳細点検の要否を検討し、必要に応じて詳細検査を実施します。その結果に沿って、継続して使用、補修、更新工事いずれかの判断がされます。

対象が配管の場合、診断実績から外面腐食が発生しやすい箇所は次のような部位が考えられます。

保温材下腐食:Corrosion Under Insulation(CUI)

エルボの保温外装板金の損傷 インシュレーションサポートがない保温配管のUバンド固定部 保冷配管のシューサポート
エルボの保温外装板金の損傷 インシュレーションサポートがない保温配管のUバンド固定部 保冷配管のシューサポート
破損したエルボの板金などの保温外装板金から雨水が侵入・滞留し、保温材下腐食(CUI)が発生する。 保温材の中にUバンドが隠れている場合、そこに水が溜まり易く保温材下腐食(CUI)が発生する。 保冷外装板金の切り欠き部から大気中の湿気が保冷材に入り、配管表面で結露し保温材下腐食(CUI)が発生する。
断熱された配管の上向きノズル 保温された配管の下向きノズル 保温材施工の水平配管フランジ
断熱された配管の上向きノズル 保温された配管の下向きノズル 保温材施工の水平配管フランジ
上向きノズル部で切り欠きされている保温材外装板金で、雨水が目地シール不良などから侵入、ボスなどの段付き部に滞留して保温材下腐食(CUI)が発生する。 目地のシール不良部から水分が侵入し、断熱材の中に滞留することで、下向きノズル部の周辺で保温材下腐食(CUI)が発生する。 直管部とフランジ部の保温外装板金の繋ぎ目の目地シール不良や劣化・損傷から雨水が侵入・滞留し、保温材下腐食(CUI)が発生する。
保温材施工の縦配管フランジ 断熱された配管のフロアー貫通部下 縦配管下の水平管
保温材施工の縦配管フランジ 断熱された配管のフロアー貫通部下 縦配管下の水平管
上部の保温外装板金の開口やサポート部の切り欠きから侵入した雨水がフランジなどの形状不連続部に滞留し、保温材下腐食(CUI)が発生する。 フロアー下断熱材の端部は仕舞や目地コーキングの施工が難しいことから、フロアー貫通配管の保温材から雨水が侵入し内部の配管で保温材下腐食(CUI)が発生する。 縦配管のフロアー貫通部で板金切り欠きや開口した部分から侵入した雨水が、その下の水平部で滞留して保温材下腐食(CUI)が発生する。
水平配管の断熱材端部 縦配管の断熱材端部 保温外装板金の開口部
水平配管の断熱材端部 縦配管の断熱材端部 保温外装板金の開口部
水平配管の端部の目地から侵入した雨水が、断熱材の端部の保温外装板金が折り込まれた隙間から侵入して、保温材下腐食(CUI)が発生する。 縦配管の上部から侵入した雨水が、断熱材の下端部の保温外装板金が折り込まれた隙間から侵入して、保温材下腐食(CUI)が発生する。 保温外装板金の経年によって開口した損傷から雨水が侵入・滞留し、保温材下腐食(CUI)が発生する。
上向きになっているハゼ開口部 サポートシューの未溶接部 サポートシューの当て板未溶接部
上向きになっているハゼ開口部 サポートシューの未溶接部 サポートシューの当て板未溶接部
保温外装板金のハゼつなぎ部の開口部側が上向きになっている場合、ハゼ部から雨水が侵入・滞留し、保温材下腐食(CUI)が発生する。 配管サポートシューの配管との接触部が、タック溶接されていた場合、溶接されていない部分に雨水が侵入・滞留し保温材下腐食(CUI)が発生する。 配管サポートシューの当て板と配管の接触部が、タック溶接されていた場合、溶接されていない部分に雨水が侵入・滞留し保温材下腐食(CUI)が発生する。

保温なしの外面腐食

塔、槽、タンクのノズル 横のダミーサポート 縦のダミーサポート
塔、槽、タンクのノズル 横のダミーサポート 縦のダミーサポート
水滴が配管を伝って流れ落ち、ノズルやノズルに繋がる機器で外面腐食が発生する。 ダミーサポート管内部に入った湿気によって、配管の接続している箇所に外面腐食が発生する。 ダミーサポート管内部に入った湿気によって、配管の接続している箇所に外面腐食が発生する。
結露配管の水滴が落下する箇所 上部ステージの水抜き穴から水滴が落下する箇所 地這い配管の底部
結露配管の水滴が落下する箇所 上部ステージの水抜き穴から水滴が落下する箇所 地這い配管の底部
上部配管から落下する水滴によって、下部配管に外面腐食が発生する。 上部ステージの雨水滞留防止であけられた水抜き穴から落下する水滴によって、下部配管に局所的な外面腐食が発生する。 地這い配管の底部に付着した泥やゴミに跳ね上げられた雨水が滞留して外面腐食が発生する。
配管のUバンド固定部 容器の下部ノズル ノズル部フランジ
配管のUバンド固定部 容器の下部ノズル ノズル部フランジ
ラック・サポートで配管を固定しているUバンドの隙間に水分が滞留して外面腐食が発生する。 雨水が容器伝いに垂れて、下部ノズルに外面腐食が発生する。 チーズ配管の分岐した細ノズル部や縦配管のフランジやソケット溶接部に水分が滞留して外面腐食が発生する。
フランジ部の隙間 結露した配管の下抜きノズル 配管のラック・サポート接触部
フランジ部の隙間 結露した配管の下抜きノズル 配管のラック・サポート接触部
フランジ部の隙間に雨水が滞留して外面腐食が発生する。 結露した配管の水滴が下向きノズルのフランジ上に溜まって、ノズル溶接部で外面腐食が発生する。 配管とラック・サポート接触部の隙間に雨水が滞留して、防食塗装不良・劣化・損傷による外面腐食が発生する。
溶接熱影響部 防食テープと配管の接触部 フロアー貫通配管
溶接熱影響部 防食テープと配管の接触部 フロアー貫通配管
溶接部は、溶接時の加熱により溶接していない部分より錆が発⽣しやすく、また不連続部による塗装不良により外⾯腐⾷が発⽣しやすい。 配管と接触している防食テープや目地コーキング剤の劣化・損傷箇所に雨水が侵入・滞留して外面腐食が発生する。 フロアーを貫通する裸配管は、フロアー上で跳ねた雨水により外面腐食が発生する。
地下ピット内敷設配管 サポート部との接触部 吊りサポート
地下ピット内敷設配管 サポート部との接触部 吊りサポート
地下ピット内は湿気が高く、雨水による水没、泥、ゴミの堆積などで外面腐食が発生する。 配管サポート部との接触部に雨水が滞留し外面腐食が発生する。 配管の接触部の隙間から雨水が侵入・滞留し外面腐食が発生する。

耐火材下腐食:Corrosion Under Fireproofing(CUF)

タワースカート タンク脚柱
タワースカート タンク脚柱
耐火被覆の不良部から雨水が侵入・滞留し、耐火材下腐食(CUF)が発生する。 耐火被覆の不良部から雨水が侵入・滞留し、耐火材下腐食(CUF)が発生する。

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