高温硫化物腐食や酸露点腐食など、内容物の性状や温度・運転条件などにより、腐食率が大幅に変化する場合があります。腐食率を精度よくモニタリングしながら、運転条件や中和剤などを変化させ、腐食率をコントロールできれば、設備の長寿命化を図ることが可能です。しかし、高温の箇所などは、従来の測定技術では測定精度が低く手間がかかり、接触媒質など安全性の問題もありました。
PEC(Pulsed Eddy Current:パルス渦流探傷)によるモニタリングは、高温箇所でも高い繰り返し精度で計測ができ、短期間で高精度の腐食率算出が可能になります。
同一ポイントでの定期モニタリングの場合、板厚測定の繰り返し精度は、板厚の±0.2%。板厚のわずかな変化も正確にとらえることができるため、短期間の測定で腐食率を把握することが可能です。
300℃近い高温であっても、板厚の±0.2%の繰り返し精度を維持(温度補正あり)。高温硫化物腐食モニタリングなど、高温下でも高精度で腐食率をモニタリングします。また、接触媒質を使用せず計測できるため、高温でも安全に計測できます。
常設センサーではなく、モバイルシステムのため、初期のセンサー購入・設置工事費用が不要。状況に合わせた、モニタリングポイントの増減も容易です。測定ポイントは、ポジションフレームにより、正確に管理できます。
PECには300℃近い高温であっても再現性が高いという特長があります。同一箇所の測定で、繰り返し精度が板厚の±0.2%と非常に高精度な計測が可能です。その特長を利用し、腐食率のオンラインモニタリング管理にも活用されています。
例えば、運転中の高温配管のモニタリングでも、金属板厚の微少変化を短期間で把握することができるため、管内を流れる原料や製品の種類と腐食率の相関関係、運転方法や薬注の種類・量と腐食率との相関関係などをつかむことができます。
これにより、安全確保に繋がる正確な余寿命の算出や、設備の延命に繋がるオペレーション変更など、腐食率を把握・コントロールしながら積極的に設備を維持管理していくことが可能です。
PECでの診断は、様々な用途・条件にフレキシブルに対応できます。検査適用可能な条件は以下の通りです。
測定可能板厚 | 3~35mm |
測定可能材質 | 炭素鋼 |
対象金属温度 | ~420℃(保温撤去時) |
測定可能な形状・大きさ | 平板:フットプリントサイズ以上 配管・円筒形:裸配管の場合1インチ以上 |
測定精度 | 板厚の±0.2% |
表面処理 | 不要 |
測定速度 | 25点/人・日 |
非接触の計測と高い繰り返し精度により、高温でも高精度の計測が可能となり、運転中に精度よく腐食率を把握し、コントロールできます。
PEC検査 | 超音波肉厚測定 | |
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表示データ | 相対値 | 絶対値 |
測定精度(低温) | ◎ | ◎ |
測定精度(高温) | ◎ | × |
検査速度 | ○ | △ |
診断完了後には、測定ポイントごとに、板厚のトレンドグラフや短期腐食率、長期腐食率などが記載されたレポートを提出します。運転条件と照らし合わせることで、運転と腐食率との相関関係をつかむことが可能になります。
金属表面の傷検出などには渦流探傷検査が用いられます。一般的な渦流探傷検査では、交流電流を連続的に流して磁界を発生させたプローブ(コイル)を、測定対象金属に近づけて渦電流を発生させます。そのプローブで測定対象エリアを走査しますが、このとき金属表面に傷などがあれば、渦電流が変化します。この変化を検出して検査を行います。
一方、PEC(パルス渦流探傷)では、コイルに直流電流をパルス状(短形波)に流すことで、対象金属表面に渦電流を発生させます。この状態を「発信モード」と呼びます。渦電流を発生させた後、次の電流を通すまでの間は入力電流を停止します。この状態を「受信モード」と呼びます。発信モードと受信モードは交互に現れます。
受信モードでは、対象金属表面に発生した渦電流より逆向きの磁界が発生し、プローブ内の受信コイルを貫く磁束が変化することで発生する誘導電流を信号として検出します。
渦電流は、受信モード初期には金属表面にありますが、減衰しながら徐々に金属内部に浸透して行きます。その際、受信コイルで検出している信号も徐々に減衰して行きます。最終的に、渦電流は対象金属の裏面に到達しますが、裏面まで到達すると渦電流は急速に減衰し、受信コイルで検出している信号にも同様の変化が見られます(急速に減衰が始まる点を変曲点といいます)。
厚い金属を計測した場合は、変曲点までの時間は長くなり、薄い金属を計測した場合は、逆に変曲点までの時間は短くなります。板厚の大きさと変曲点までの時間には相関があるため、その時間を計測することで、板厚が算出できます。