アライメント精度と部品寿命の関係 | TTS

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アライメント精度と部品寿命の関係

日常的な部品交換の原因は?

精密、正確なアライメントが行われていないと、ポンプに振動が発生します。その振動がベアリングやメカニカルシールなどの部品寿命に悪影響を与えているであろうことは想像できます。しかし現実には日常的な修理作業としてベアリングやメカニカルシール等の部品は交換されますが、ミスアライメントが故障の原因の1つとして疑われることは殆どありません。

A社では回転数が3450rpmのポンプをストレートエッジ(定規)でアライメントし、ベアリングの交換は平均1~2年の周期で実施していました。しかしベアリング交換修理直後に高い振動が発生し、アライメントをやり直すことが度々発生するようになり、改善の必要性が発生していました。アライメントツールを調べている過程で、アライメントの良し悪しで、ベアリングやメカニカルシールの寿命が左右されることが判りました。

アライメント精度が影響するベアリングとメカニカルシールの寿命

振動をできるだけ低くすることは回転機の安定運転にとって重要なことです。そこでミスアライメントがあるときの振動の大きさを、一般的なフランジ型フレキシブルカップリングをもつ7.5kW3450rpmのポンプで測定しました。まず芯ずれ、面開きを0.05mm以内にアライメントした後、水平方向の芯ずれだけを大きくしていったときの振動値を測定すると、芯ずれが0.1mmを越すとJISB0906に定義されている振動基準の注意レベル(1.8mm/s)を越える振動が発生しています。振動を低くするには、フレキシブルカップリングであっても精密な芯出しが必要なことが分かります。

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次のデータはミスアライメントによって、ベアリング寿命が短くなることを示しています。テストしたカップリングはリンク、グリッド(SF)、ギヤ(歯車)の3種類です。メーカー許容値には各カップリングの最大芯ずれ許容量が記されています。例えば、ギヤカップリングは1.27mmの芯ずれ許容能力があるとされていますが、0.13mm(安全率10)以下に芯出ししないとベアリングの寿命が短くなることが判ります。すなわち、芯出し許容値はカップリングの安全使用に対するものであり、ベアリングの寿命に与える影響まで考慮されたものではないということです。

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カップリングのタイプ 設備寿命との比 最大芯ずれ許容量
[mm]
90% 80% 50%
芯ずれ[mm]
リンク型 0.08 0.13 0.51 0.66
グリット(SF)型 0.03 0.05 0.13 0.30
ギヤ(歯車)型 0.13 0.25 0.89 1.27

さらにメカニカルシールメーカーの技術ハンドブックに「メカニカルシールの寿命とアライメント精度の関係」を示したデータが紹介されています。0.05mmの芯出しを施されたメカニカルシールの寿命は連続使用月数が80ヶ月なのに対し、0.25mmでは1/10の8ヶ月にまで減少しています。つまり、これらのデータから言えることは、モーター、ポンプやファンなどの回転機で振動の発生、ベアリング故障やシールの漏れが発生したとき、ミスアライメントが原因の大きな要素である可能性が高く、調査してみる必要があることを示唆しています。すなわち精密なアライメントは回転機の安定運転にとって非常に重要な条件だということができます。

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回転機のアライメント精度向上と作業時間短縮のために

回転機のアライメント状態は、レーザー軸芯出し器で、簡単に、素早く、正確に知ることが出来ます。A社では振動が大きかったポンプを測定したところ、ストレートエッジを使った芯出しでは面開きが0.27mmと、その悪さが判明しました。そこで、ただちに修正指示値に従ってアライメントをやり直し、振動を下げることに成功しました。アライメント計測だけであれば、ポンプを停め、カップリングカバーをはずし、レーザー軸芯出し器のセンサーをセットし、軸を60度以上回転させるだけです。復旧も含めて所要時間は10分程です。

アライメント精度向上のためにレーザー軸芯出し器を導入されたA社では、当初はストレートエッジを使っていた時と比べ、アライメント時間は長くなりましたが、0.05mm以内の精密な芯出しが行える様になりました。その後操作に慣れるにつれて、アライメント時間は従来の30~50%の時間でできるようになりました。そしてベアリングの交換周期(寿命)は3~5年に伸びたのです。この成果を100台のポンプに換算すると、導入前の年間67台の交換修理が25台に減少し、この効果を1台あたりの修理コストを5万円とすると210万円のコスト削減となります。

  導入前 導入後
芯出し精度 0.27mm 0.05mm
アライメント時間 100% 30~50%
ベアリング寿命 1~2年 3~5年
コスト削減額* 0円 210万円

※年間67台の修理が25台に減少(1台あたりの修理コストは5万円)

このようにレーザー軸芯出し器では、短期間で芯出し技能の習得、精密な芯出しが可能になり、結果的に機械部品寿命が延び、設備の安定・安全運転の達成、メンテナンスコストの削減、突破故障の防止と生産機械損失の防止などの成果を得ることができます。

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