オンラインとオフラインを組み合わせた振動管理 | TTS

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オンラインとオフラインを組み合わせた振動管理

振動モニタリングの2つの方法

回転機械設備で、突然の故障停止を回避したり、計画的にメンテナンス作業を 行ったりするために、振動計測によるコンディションモニタリングが有効な手 段であることはよく知られています。既に導入により大きなメリットを得てい る企業も多いでしょう。

振動モニタリングの方法は、以下の二つに大別できます。

オフラインシステム

ポータブル振動計を用いて人間が計測

オンラインシステム

振動センサーを設備に常設し、監視用PCと繋いで常時監視

オフラインシステムの最大のメリットは、オンラインシステムと比べて、初期投資を抑えされることです。また、一つのシステムで、数千台まで対象設備を広げられるというメリットもあります。デメリットとしては、人が近づける箇所しか測ることができない、回転数や負荷の変動がある場所には適さない、多 くのマンパワーを要する、測定の間隔を短くするのが難しいこと、などが挙げられます。

例えば3000rpmのモーターのベアリングで1ヵ月周期の振動測定を行なっていた 例を紹介します。

前月までは全く異常がありませんでしたが、当月の測定で振動値が急上昇していました。これにより何らかの異常が発生していることがわかりました。さらに精密診断を行ったところ、既にかなりダメージが進んでいることが判明しました。そのため、元々計画していた時期とは違う時期に設備を停止させ、ベア リングの交換処置をせざるを得ませんでした。

この場合、設備が壊滅的破損に至る最悪の事態は回避できましたが、予定外の停止を行うための生産調整など、突発的に多くの周辺業務が発生してしまいました。このように急速に悪化するケースでは、当然のことながらより早い段階 で兆候を掴むほど有利ですが、オフラインでは限度があります。

オフラインのケース

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オンラインのケース

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一方、オンラインシステムは、遠隔で常時監視を行うため、オフラインシステムの問題を全て解消できる反面、投資が莫大になり、予算の制限などから本来測定すべき設備をカバーしきれないという事態も生じ得ます。対象箇所全てにセンサーを設置し、管理システムまでケーブルを敷設するため初期投資がかさむのです。

オンライン、オフラインいずれのシステムでも、異常が検出された場合には精密診断を実施し、異常個所や原因の特定、余寿命の推測などを行ないます。

最適なのはミックス

オンラインシステム導入時、希望箇所全てを対象とする予算が無い場合は、優先順位をつけて、対象を限定することになるでしょう。しかしそれではモニタリングできない箇所が生じてしまうことになります。そこで、予算が不十分な場合はオンラインとオフラインを組み合わせたコンディションモニタリングと いう方法も考えられます。

機械構造的に振動が出やすい箇所をオンラインで監視します。数値が上昇すればオフラインによってそれ以外に必要な箇所・データを測定するという使い方です。

例えば、油・塗料のミストや粉塵の多い箇所で使用する排風機などは、運転時間の経過と共に、ファンにミストや粉塵が付着して“膜厚”が厚く(重く)なっていきますが、その膜が運転中急に部分的に剥離することがあります。その結果ファンに突然大きなアンバランスが発生し、これによる振動が短期間でベアリングにダメージを与えます。

ベアリングの故障は潤滑状態、寿命によることが多いのですが、このように、アンバランスやミスアライメントによる大きな振動で、ベアリングの負荷が増大し引き起こされる場合もあります。この場合は、ファンケーシングの振動速度をオンラインによって監視し、突然のアンバランスを検知することが有効です。普段、定期的にオフラインで行っているベアリングの測定は、振動速度の異常発生をトリガーとして、それ以降頻度を上げて行えば良いのです。

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このように、オンラインとオフラインの組み合わせによって、適用可能なアプリケーションの広がりが期待できます。

  • 「過去に振動管理の導入を検討し、投資費用やマンパワーの面で最適なシステムが構築できずに断念した」
  • 「導入はしてみたものの、先述のような理由で上手く活用できなかった」
  • 「現状の振動管理システムを更に最適化したい」

という方は、一度この観点からシステムを見直してみてはいかがでしょうか?

オンライン+オフラインの注意点

オンライン+オフラインの組み合わせで、特に注意しなければならない点は何でしょうか?オンラインとオフライン、更には精密診断も行う場合、使用するツールが異なると、通常はデータの管理ソフトや分析ソフトも異なり、別々にデータを管理 しなければならない、という面倒なことが起こります。

二度手間になる、という点に加えて、同じ機器に関する診断データが別々に管理されることで、分析が不十分になったり、重要な兆候を見落としたり、同じ基準で比較ができなくなったりする、という心配もあります。オンラインとオフラインというデータ収集の手段は異なっても、同じ機器のコンディションに関する情報である以上、一元管理されている方が望ましいこと は言うまでもありません。

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