軸芯出し(シャフトアライメント)の表し方 | TTS

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軸芯出し(シャフトアライメント)の表し方

芯出し状態の定量化

軸芯出し(シャフトアライメント)では、位置を測定しずれを修正するために、芯出しの状態を定量化し、表現する方法が必要です。

国内では、ダイヤルゲージによる芯出しが広まり定着しているため、多くの場合、軸芯出しの状態を表現するのに、ダイヤルゲージの数値(ふれ量)のみが確認されています。しかし、ダイヤルゲージの値は、同じ軸芯出し状態でも取り付け方や設備のサイズなどで大きく数値が変わります。更に、ダイヤルゲージの場合、重力によるたわみ(ダレ)を考慮しなければならないため注意が必要です(ダイヤルゲージのダレについては、ダイヤルゲージのダレによる誤差をご参照ください)。

ダイヤルゲージでは取り付け方や測定位置で数値が異なります

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世界的に標準となっている芯出し状態の表現方法

現在、世界的に標準となっているものは、設備の芯出し状態を水平・垂直方向それぞれの傾斜角度とオフセットで表現する方法です。この方法では、次の4つの数値で芯出しの状態を表現することができます。

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傾斜角度と面開き

傾斜角度は、2つの回転軸芯間の角度を示しています。傾斜角度は、度数([°][rad]など)で直接表示するか、傾き([mm/m]など)で表示することができます。

傾斜角度にカップリングの直径を掛け合わせる(または傾斜角度αとするとカップリング直径とsinαの積を求める)と、カップリング縁における面開きの距離を求めることができます。

そのため傾斜角度は、角度計などを用いて直接測定するのではなく、カップリングの直径における面開きを測定することで代用されるのが一般的です。面開きの数値自体は、軸芯出し状態を表していません。軸芯出し状態を表すためには、直径で面開きの値を割って傾斜角度を出す必要があります。

ここでいう直径とは正しくは「作業直径」で、傾斜角度と面開きを仲立ちする数値です。任意の作業しやすい数値にすることができ、多くの場合、作業対象のカップリングの直径を採用するため、「カップリング直径」と呼ばれます。

傾斜角度 × 作業直径 = 面開きの距離

例えば、150mm のカップリングの上側が0.13mm広がっている場合、2つの回転軸芯間の角度は、0.86 mradsになります。この状態で作業直径を100mmとすると、面開きの値は、0.086mm です(1mrad = 1mm/m)。

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繰り返しになりますが、重要なのは傾斜角度です。同じ傾斜角度でもカップリングの大小で面開きの数値は異なるため注意が必要です。

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オフセット

オフセットはある特定の点における2つの回転軸芯間の距離を示し、mmで表されます。オフセットは、平行オフセットなどと呼ばれることがありますが、この表現は正確ではありません。実際には、回転軸芯が平行であることは稀だからです。

同じ芯出しの状態でも回転軸が平行でなければ、オフセットの値は軸のどの位置で計測するかによって異なります。一般的には、オフセットはカップリング間の中心位置で計測されます。但し、中間軸のあるカップリング(スペーサーカップリング)の場合はカップリングの動力伝達面で計測されます。

測定位置によってオフセット量は異なる

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設備の位置関係をプラスとマイナスで表す

芯出しの状態は、常に傾斜角度とオフセットの組み合わせであり、機械の垂直・水平両方向の4つの数値を用いて、プラス・マイナスで表されます。

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中間軸の芯出し

中高速で回転している設備は、シャフトやベアリング、シールへの過度の負荷を避けるため、非常に正確な軸芯出しが求められます。熱膨張などにより、設備運転中に大きなアライメントの変化が予想される場合は、その対策として中間軸(スペーサーシャフト)が使用されます。

中間軸を活用すれば、設備に大きな位置変化が発生した場合でも、中間軸の長さにより、中間軸端の角度変化は、小さいままの状態が維持できます。両側にずれを吸収するためのフレキシブルエレメントのある中間軸が取り付けられた設備では、フレキシブルエレメントがずれを吸収し、中間軸の長さにより角度変化も小さいため、アライメントの精度は厳しく求められません。

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中間軸を持つ設備でアライメントの状態を示す際、中間軸にはカップリングが2箇所あるため、中間軸の回転軸芯とそれぞれの設備の回転軸芯の角度を、2つのカップリングの垂直・水平両方向、計4箇所測定して表します。

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角度(aとb)の代わりに、オフセットで芯出し状態を表現することもできます。オフセットは、中間軸の端部と設備回転軸芯との間で測定されます。これは、リバース方式のアライメントでも活用されています。

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角度a.bとオフセットB.Aの値はそれぞれ関連しており、角度aが大きくなるとオフセットBの値も大きくなり、角度aが小さくなるとオフセットBの値も小さくなります。

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