軸芯出し(シャフトアライメント)に求められる精度
フレキシブルカップリングの軸芯出し許容値
軸芯出し(アライメント)の値は運転状態でゼロに近いのが理想です。しかし、実務でゼロを追及すると作業が困難で多大な時間を要するため、振動が発生しにくい範囲での軸芯出しの許容値が定められています。
通常、軸芯出しの許容値は設備メーカーや社内基準等により、設定されています。全く基準が無い場合には、20年以上にわたる軸芯出し経験を持つレーザー軸芯出し器のリーディングメーカー、Pruftechnik(プルーフテクニック)社が推奨する許容値(超えるべきではない基準値)を活用することもできます。
例えば、1500rpmで運転されているショートフレキシブルカップリングが取り付けられた回転機の場合、オフセットの許容値は以下となります。
このため、垂直方向のオフセット値が-0.04mm、水平方向のオフセット値が+0.02mmであったとすると、両方の値が0.06mm以下であり許容値に対して「優秀」範囲内と評価されます。
優秀 | 芯出し不要 | |
---|---|---|
許容可 | ||
許容不可 | 芯出し必要 |
傾斜角度の許容値
傾斜角度は、通常、面開きの距離として測定されるため、ある一定の傾斜角度を持った設備の場合、カップリングの直径が大きくなれば面開きの値も大きくなります。
傾斜角度 × 作業直径(カップリング直径) = 面開きの距離
例えば、150mm のカップリングの上側が0.13mm広がっている場合、2つの回転軸芯間の角度は、0.86 mradsになります。この状態で作業直径を100mmとすると、面開きの値は、0.086mm です(1mrad = 1mm/m)。
傾斜角度の許容値は、100mmあたりで記載されている場合が多いため、実際の許容値はカップリング直径をかける必要があります。例えば、カップリング直径が75mmで1500rpmで回転している設備の場合、最大許容面開き量が、カップリング直径100mmあたり0.07mmであれば、この設備では0.07mm×75/100=0.0525mmが許容値となります。
傾斜角度の許容値 = カップリング直径100mmあたりの最大許容面開き量 × カップリング直径 / 100
中間軸(スペーサーシャフト)の許容オフセット量
中間軸(スペーサーシャフト)の場合、中間軸の長さ100mmあたりの許容オフセット量が定義されます。例えば、6000rpm、中間軸長さ300mmで運転されている設備の場合、最大許容オフセット量は、中間軸長さ100mmあたり0.03mmであれば、0.03mm×300/100=0.09mmが中間軸両端における最大オフセット許容値です。
実務で使用する許容値
産業用回転機械において、許容できるミスアライメントの量は、回転数や出力、カップリングの種類、中間軸の長さ、設備の設計、要求される設備寿命など、多くの条件によって決められています。しかし、実際にはこれら全ての条件を考慮するのは、実用的ではないため、ある程度の簡略化が必要となります。
設備回転数と中間軸カップリングの長さに基づく許容値をまとめたデータ集を、1970年代にPruftechnik社が出版し、多くの実務に使用されてきました。これらの許容値は主に、潤滑されたギアカップリングでの経験に基づいて設定されたものです。しかし同時に、これらの許容値は圧倒的多数であるフレキシブルエレメントが内蔵された、非潤滑のカップリングシステムでも有効であることが経験上確認されています。
Pruftechnik社の許容値表
Pruftechnik社が推奨する許容値表はあくまで参考値ですので、設備メーカーや社内基準等により許容値が設定されている場合には、そちらを優先させてください。社内で基準が無い、またはこれから基準を設けるという場合には、Pruftechnik社の許容値表がご使用いただけます。
Pruftechnik社許容値表の“許容可”の限界値は、潤滑された金属同士のすべり速度12mm/秒を許容できるすべり速度として計算されています。これらの数値は、フレキシブルエレメントのゴムの剪断(せんだん)速度から算出したものとほぼ同一であるため、フレキシブルエレメントを持つショートフレキシブルカップリング(※)にも適用可能です。
※:ショートフレキシブルカップリングとは、カップリングのフレキシブルエレメントの軸方向の長さ、または2つのフレキシブルエレメント間の距離がカップリングの直径と等しいかそれ以下のカップリングを指します。
「優秀」の許容値は、様々な設備の振動発生につながるミスアライメント量より定義されています。但し、これらの許容値内だからといって、振動の無い運転を保証するものではありません。
許容値表
ショートフレキシブル カップリング
回転毎分(RPM) | mm | ||
---|---|---|---|
許容可 | 優秀 | ||
オフセット |
600 | 0.23 | 0.13 |
750 | 0.19 | 0.09 | |
900 | 0.15 | 0.08 | |
1200 | 0.10 | 0.06 | |
1500 | 0.09 | 0.06 | |
1800 | 0.08 | 0.05 | |
3000 | 0.06 | 0.03 | |
3600 | 0.04 | 0.03 | |
6000 | 0.03 | 0.02 | |
7200 | 0.03 | 0.01 | |
傾斜角度 |
600 | 0.15 | 0.10 |
750 | 0.13 | 0.09 | |
900 | 0.10 | 0.07 | |
1200 | 0.08 | 0.05 | |
1500 | 0.07 | 0.05 | |
1800 | 0.05 | 0.03 | |
3000 | 0.04 | 0.03 | |
3600 | 0.03 | 0.02 | |
6000 | 0.03 | 0.02 | |
7200 | 0.02 | 0.01 |
中間軸とディスクカップリング
回転毎分(RPM) | mm | ||
---|---|---|---|
許容可 | 優秀 | ||
中間軸の長さ100mmあたりのオフセット |
600 | 0.30 | 0.18 |
750 | 0.25 | 0.15 | |
900 | 0.20 | 0.12 | |
1200 | 0.15 | 0.09 | |
1500 | 0.12 | 0.07 | |
1800 | 0.10 | 0.06 | |
3000 | 0.07 | 0.04 | |
3600 | 0.05 | 0.03 | |
6000 | 0.03 | 0.02 | |
7200 | 0.03 | 0.02 |
ソフトフット
回転毎分(RPM) | mm | ||
---|---|---|---|
ソフトフット | 回転数に関係なく | 0.06 |