カップリングの応力と軸の曲がり | TTS

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カップリングの応力と軸の曲がり

芯出しトラブルの原因?

ダイヤルゲージやレーザー軸芯出し器を使って軸芯出し(シャフトアライメント)を実施する際、測定値からシムの量を計算して修正しても、機械が予想と違った動きをして、なかなかうまくいかない場合があります。芯出しの測定やシムの計算が正しくない場合もありますが、機械側が原因となっている場合もあります。

今回は、このようになかなか芯が出ない、時間がかかる、芯出しが合わないといったトラブルの原因の一つである、カップリングの応力と軸(シャフト)の曲がりについてお話しします。

カップリングに対する応力の影響

例えばポンプなど、カップリングの近くに固定したフロントサポートが付いているような設備では、そのサポートは軸の周方向の力に対して強い拘束力を発揮し、振動などを低下させています。 このような設備で芯ずれがある場合、小さな芯ずれであれば固定されたカップリングが芯ずれによる応力を吸収し、芯ずれの応力による問題が表面化しないケースもあります。

しかし芯ずれが大きいとカップリングで芯ずれを吸収しきれず、カップリングとサポート部を支点として軸に大きな外部応力が発生し、軸が変形したり(曲がったり)、サポートや機械の基礎が変形する場合があります。軸が変形していると、多くの場合カップリングの位置や向きが変わるため、アライメント測定値に影響を与えます。つまり、カップリング付近の見かけ上の芯ずれと、真の軸芯ずれとが異なるのです。

冒頭のアライメント調整をした後の測定値が、アライメントの修正量と一致しないケースも、これが原因の一つと考えられます。以下の図は、潜在的な問題を示しています。これは、カップリングが接続されていない状態のアライメント計測状況で、真のずれを示します。

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これは、カップリングが接続された状態でのアライメント計測状況で、応力による軸曲がりの影響を受けた、見かけ上のずれを示します。

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真のずれと見かけ上のずれに差があるため、見かけ上のずれに基づいて芯出しを行っても、真のずれとの差が残り、ずれはゼロにはなりません。

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見かけ上のずれに基づいて芯出しを行っても、正しい方向に修正された場合は応力が減少し、数回の芯出しでずれはゼロに近づきます。しかし、状況によっては逆方向に修正してしまうこともあり、その場合は何度芯出しを繰り返しても正しく調整されることはありません。

ポンプなどの設備によく使用される、カップリング間にディスクなどのエレメント(緩衝材)があるフレキシブルカップリングは、エレメントの周方向の剛性が非常に高いためカップリングが周方向に動きにくく、外部応力による軸の変形を大きくする傾向があります。

応力の影響を受けずに芯出しをするには

芯ずれが大きく、カップリングが応力の影響を受けている疑いがある場合は、一旦カップリングの接続を切り離しフリーな状態で粗芯出しをしてから、再度接続して芯出しを行うと、正しく調整することができます。

もし、応力の影響を考慮せずそのまま芯出しを実施すれば、新しいアライメントの測定値は間違っているばかりか、要求されるアライメントと逆にアライメントをしてしまうこともあります。

極端な場合では、新たなアライメントにより発生したカップリングへの応力により、運転中に軸が曲がってしまう場合もあります。ほとんどの場合、この曲がりは非常に小さいものですが、回転軸のアライメント測定には十分な影響を与えます。

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