検査効率を上げるスクリーニング | TTS

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検査効率を上げるスクリーニング

検査をしなければならない配管総延長は数百キロメートルにもなる

外観目視検査の問題点」で述べたように、既に老朽化が進んだプラントは待ったなしの状況になっています。いかにスピーディーに検査の網羅性を上げるかが、外面腐食に打ち勝つための重要なポイントになっていると言えます。しかし、多くのプラントでは検査をしなければならない配管の総延長は数百キロメートルにもおよび、解決が難しい課題と捉えられています。

検査をしなければならない配管総延長は数百キロメートルにもなる

保温配管の外観目視検査の課題

目視検査で「保温材下腐食(CUI)など外面腐食が発生しやすい場所は?」で述べた保温材下腐食(CUI)を考慮しながら保温外装の腐食箇所を見つけ、その箇所の保温材を解体して内部の配管の状態を検査する「外観目視検査」と呼ばれる手法が広く実施されています。しかし、実は外面の腐食と内部の腐食には必ずしも関連性が無いため、空振りに終わることが少なくありません。
その際、保温材の解体に必要なコスト(足場の設置や解体も含む)が無視できない額であるため、空振りを承知で解体箇所を増やすことができません。その結果、健全性が担保できていない箇所が日に日に増えていっているのが実情です。

保温配管の外観目視検査の課題

スクリーニング検査とは

検査の網羅性を向上させる方法として、スクリーニング検査があります。抜け漏れなく検査する詳細検査に対して、スクリーニング検査は短期間で広範囲をざっと確認して、腐食の「可能性の有無」を調べる技術です。
そのため、スクリーニング検査は、同じ費用であれば検査の網羅性を高めることができ、同じ検査範囲ならば検査費用を下げることができます。

ロングレンジガイド波によるスクリーニング検査

 

  外観目視をベースにした腐食検査 スクリーニングをベースにした腐食検査
検査結果 検査結果:外観目視をベースにした腐食検査 検査結果:ロングレンジガイド波によるスクリーニングをベースにした腐食検査
スクリーニングは検査できる範囲が広いため、外観目視よりも異常(問題あり)が見つかりやすい
外装・保温材の解体件数 外装・保温材の解体件数(5箇所):外観目視をベースにした腐食検査 外装・保温材の解体件数(2箇所):ロングレンジガイド波によるスクリーニングをベースにした腐食検査
スクリーニングは広い範囲を一度に検査できるため、外観目視よりも外装・保温材を解体する箇所が少ない

スクリーニング検査には精密検査ほどの精密さはありません。そのため、スクリーニング検査を採用する時には、どの程度の腐食を見つけたいのかを、事前に整理しておく必要があります。板厚の半分程度の大きな減肉を発見できればよいという対象であれば、スクリーニング検査が活用できます。スクリーニング検査により腐食の可能性がある箇所を絞り込み、それから優先順位をつけて詳細検査を実施すれば、メリハリを持って検査の網羅性を上げることができます。

スクリーニング検査のラインアップ

TTSは2000年頃から他社に先駆けて、海外からスクリーニング技術を取り入れてきました。 現在、TTSが保有する外面腐食のスクリーニング技術としては次の3つがあります。

Teletest
ロングレンジガイド波の検査のイメージ
Pulsed Eddy Current
パルス渦流探傷の検査のイメージ
Bracelet
電磁場の振幅と位相を利用の検査のイメージ
ロングレンジガイド波による検査は、各プラントにおける腐食、エロージョンなど、配管全体の内外面の減肉部分を長距離超音波により検査することで、減肉リスクの有無とその発生場所を検出・特定します。 1箇所にセンサーをセットするとセンサー前後の数十メートル間をスクリーニング(広域の粗診断)できるため、センサーの取り付け箇所を順次移動していくことで、最小限のアクセスで、長距離配管の全面スクリーニングが可能です。 PEC(Pulsed Eddy Current:パルス渦流探傷)スクリーニングは、電磁誘導による渦電流を利用して、非接触で金属板厚を測定できるため、耐火材や保温材などの上から金属の板厚検査が可能です。外装材の解体や塗装の剥離が不要になるため、検査トータルコストの低減や検査カバー率アップ、検査工期短縮に繋げることができます。 Bracelet(ブレスレット)検査は、UTのような「点」よりも広い「面」で連続的に板厚情報を取得できるため、測定のカバー率が上がり腐食の見逃しが発生しにくく、孔食(ピッチング)のような小さな腐食も発見します。 また、CUI用のプローブを用いれば外装材の解体や塗装の剥離が不要になるため、検査トータルコストの低減や検査カバー率アップ、検査工期短縮に繋げることができます。
Teletest ロングレンジガイド波の検査のイメージ Pulsed Eddy Current パルス渦流探傷の検査のイメージ Bracelet/E-Pit 電磁場の振幅と位相を利用の検査のイメージ
センサーを設置する箇所のみ保温・保冷材を解体 保温・保冷材の上から検査が可能
センサーを設置する箇所のみ保温・保冷材を解体: ロングレンジガイド波の検査のイメージ 保温・保冷材の上から検査が可能:Pulsed Eddy Current パルス渦流探傷の検査のイメージ 保温・保冷材の上から検査が可能:Bracelet/E-Pit 電磁場の振幅と位相を利用の検査のイメージ

各種のスクリーニング検査を使い分けるポイントとは

残念ながら、スクリーニング検査の各種技術にも得意・不得意があるため、一つの検査技術で全ての部位をカバーすることはできません。そのため、配管が敷設されている位置、材質や配管施工状況、見つけたい損傷形態、腐食が発生する面の状態や形状などによって使い分けます。また、スクリーニングが得意な箇所はスクリーニングを採用して効率化を図り、それ以外の箇所については別の検査手法を採用するといた使い分けも必要です。

  Teletest
ロングレンジガイド波
Pulsed Eddy Current
パルス渦流探傷
Bracelet
電磁場の振幅と位相を利用
裸配管 CUI
検査対象 内外面減肉 内外面減肉 内外面減肉/浸炭 外面減肉
付帯工事の有無
  • センサー取り付け部のみアクセス必要(足場,断熱材の取り外し(断熱配管))
  • 表面は3種ケレン程度(塗膜の除去は不要)
  • 測定箇所にアクセス必要(高さ6m以上の場合は足場)プローブを検査箇所に当てる必要あり
  • 断熱の取外しは不要。(ただし、磁性体板金が存在する場合は、板金のみ取り外し推奨)
  • 測定箇所にアクセス必要(足場)プローブを検査箇所に当てる必要あり
  • 測定箇所にアクセス必要(足場)プローブを検査箇所に当てる必要あり
  • 断熱の取外しは不要(ただし、磁性体板金が存在する場合は、板金のみ取り外しが必要
検査結果のレポート例 Teletest ロングレンジガイド波の検査結果のレポート例 Pulsed Eddy Current パルス渦流探傷の検査結果のレポート例 Bracelet/E-Pit 電磁場の振幅と位相を利用の検査結果のレポート例
測定可能板厚
最大板厚
配管サイズ,材質による
(ご相談ください)
2~70mm 19mm(炭素鋼)
25.4mm(鋳鉄)
外面減肉のみ検出のため無制限
配管サイズ
配管/設備サイズ
1.5~36B(40~900A)
※38B以上は要相談
2B~ 2B~平板 6B~
(断熱を含むサイズ)
保温/保冷/耐火材/防触などの厚さ センサー設置箇所のみ要解除 200mmまで -(裸の対象のみ) 75㎜まで
配管材質
測定可能材質
炭素鋼、ステンレス、各種合金 炭素鋼、鋳鉄 炭素鋼、鋳鉄
検出可能な欠陥 断面欠損率3%以上の減肉 ゼネラルコロージョン、エロージョン、フローアクセレイトコロージョン (FAC)など面積を持った減肉
(検出可能な腐食面積はリフトオフによる)
20%深さ x 6mmφ(外面),
25%深さ×12mmφ(内面,
板厚12mm以下の場合)
25% 深さ x φ25mm
(保温75mm時。保温が薄い場合、精度UP)
運転条件 表面温度 -25~+125℃ ※オプションで+240℃まで対応可能 表面温度 500℃未満 表面温度 80℃未満 表面温度 80℃未満

スクリーニングを組み合わせて検査を最適化した例

保温・保冷配管の保温材下腐食(CUI)検査で、配管の特性にあわせてスクリーニング技術を組み合わせることで、最適な結果を得ることができる例をご紹介します。

運転中に保温・保冷材の一部解体ができる 運転中に保温・保冷材の解体ができない
スクリーニングを組み合わせて検査を最適化した例:運転中に保温・保冷材の一部解体ができる スクリーニングを組み合わせて検査を最適化した例:運転中に保温・保冷材の解体ができない
運転中でも外装や保温・保冷材が解体できる保温・保冷配管は、センサーを設置できる範囲だけを解体することで配管全体の内外面の減肉部分を長距離超音波により検査できるロングレンジガイド波(Teletest)でスクリーニングします
曲がっている箇所や短い箇所はプローブでピンポイントで測定するパルス渦流探傷(PEC:Pulsed Eddy Current)で検査カバー率を向上させます。
配管の上向きのノズルの箇所はセンサーの設置個所として解体目視で検査をします。
運転中は保温・保冷材が解体できない保温・保冷配管は、外装や保冷材の上から抜けモレなく面で測定する電磁場の振幅と位相を利用したBraceletでスクリーニングをします。
曲がっている箇所や短い箇所はプローブでピンポイントで測定するパルス渦流探傷(PEC:Pulsed Eddy Current)で検査カバー率を向上させます。
配管の上向きのノズルがある箇所は休止中に解体目視で検査をします。

 

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